歯科衛生士が徹底解説【赤ちゃんのハイハイと「噛む力」「口の発達」はどうつながる?3人育児と現場実例】

舌・あご・口腔機能の発達

はじめに:ハイハイ期は❛❜口育❛❜のゴールデンタイム

赤ちゃんがハイハイし始めると、多くのご家族では「そろそろ歩くかな?」「動くのが早くて安心」といった声があがります。でも実は、ハイハイ期こそ「口の発達(口育)」…つまり噛む・飲み込む・話す土台作りに最も重要な時期だということを、どれくらいの方が知っているでしょうか。

歯科衛生士としてたくさんの子どもたちを診てきた経験、そして三人の子育てを通じた体験を踏まえ、医学的な根拠と我が子のリアルな実例、読書のよくある疑問にしっかり答えます。

【イラスト付】「ハイハイ」と「噛む力・口育」がつながる仕組み

ハイハイ(うつ伏せ姿勢+前方に進む)
→ 手・腕・肩・胸・背中・腰・首の筋肉(体幹)が発達
→ 顎・頬・口周りの筋肉も刺激
→ 座位(すわる)姿勢が安定
→ 「噛む・飲み込む・唇や舌を動かす力」が育つ

なぜハイハイが口の発達=「口育」に直結するのか?

●全身運動で“体と口”が一緒に成長
ハイハイは単なる移動行動ではありません。手足でバランスをとり、顔を前に上げて進むことで、腕・肩・首・背中など全身の筋肉がまんべんなく発達します。この『体幹』がしっかり育つことで、座ったときのブレ、食事のときの姿勢崩れが減ります。

●「噛む・飲み込む・話す」の土台になる筋肉が強化
ハイハイ中は、舌・唇・顎・食べ物を取り込む筋肉まで自然に動かされます。顔を起こす動作が増えると、舌の筋肉(舌骨筋群)と顎・首周りも鍛えられ、“噛む力”“飲み込む力”の神経回路が活性化します。

●ハイハイ→鼻呼吸→口呼吸予防にも!
うつ伏せで顔を上げると、鼻から息を吸う形になりやすく、口呼吸(常に口が開いている/よだれが多い)を予防。それが将来の歯並びや虫歯・いびき予防にも役立つのです。

【体験談】3人の子育てで感じたリアルな差

長男:ハイハイ期は短く“噛む・食べる”が苦手
第一子の長男は、おっとり座るのが好き&あまり動きたがらない子でした。
掴まり立ちや少しの移動は早かったものの、ハイハイ期がとても短い。
最初は「歩くの早くてすごい!」と素直に思っていました。

ところが離乳食が始まると、噛めずにすぐペッ。
柔らかいものだけ食べ、硬い野菜や肉はほとんど丸のみに近い状態、
おまけに食事中も口が半開きでよだれがダラダラ。

食事椅子に座っても体がブレており、背中や体幹が育っていないので首・顎・顔まわりにも力が入りませんでした。
結果「噛む・飲み込む・口をしっかり閉じる」全てが苦手。

歯科衛生士として同じようなタイプの子をたくさん見てきましたが、「運動の質=口機能発達」の大切さをわが子で実感しました。

次男:「ハイハイ名人」→噛む力も食べる意欲も抜群!
次男は正反対の“探検家タイプ”。
マットの上からリビング、ソファの下まで自分からどんどんハイハイ、周囲が驚くほど動き回っていました。
遊びたいおもちゃを少し先に置くと喜び勇んで突進、転んでも何度もハイハイを繰り返す行動力。

離乳食期になると、食材を待つ時の表情から舌の動かし方、唇の力までが明らかに違います。
ちょっとかための野菜も前歯でかじり、モグモグ奥歯の歯茎でよく噛みしめる。
食事中の姿勢も崩れず、椅子に背筋を伸ばしてしっかり座れました。

固形食への進みも早く、与える側(親)のストレスがほとんどなかったのは「よく動く・よく遊ぶおかげ」と今ならわかります。

末っ子娘:じっくり長いハイハイ期が育てた“美しい食べ方”
三人目の娘は慎重派。手足をよく観察しながらマイペースにじっくりハイハイしていました。
1歳2ヶ月までほとんどハイハイで、周囲には「まだ歩かないの?」の声も。

でも、落ち着いて見守ることに決めて環境づくりを徹底。
すると、離乳食初期から姿勢・噛み方・唇のしまりがものすごくきれいに整い、
食べ物をしっかり噛み締め、モグモグ・ゴックンの飲み込みの動作が抜群でした。

「ハイハイ期間が長い=発達が遅い」は間違いで、「その間に身体も口もじっくり鍛えられる」大切な時間であると心から確信しています。

【実践編】家でできる「ハイハイ&口育」環境づくり

●ポイント1:マットやラグは大きめに敷く
フローリングは滑りやすく冷たいので、リビングや子ども部屋全体に安全なマットを敷くのが基本です。
赤ちゃんが四方八方に自由に動けるだけで運動量は大幅アップ。
(図案)丸いスペースにマット、周囲におもちゃ・ぬいぐるみ、家具の尖った角ガードのイラスト

●ポイント2:おもちゃは少し遠く、目標をつくる
赤ちゃんが「行きたい!」「触りたい!」と思うおもちゃやモビールを、手を伸ばしただけでは届かない所に配置。
前進しようとする→ハイハイやずりばいが自然に増えます。

●ポイント3:親が床に座り、赤ちゃん目線で応援
親自身も一緒にマットに座って「がんばれ!」「こっちだよ」と声掛け。
親子で顔を合わせることで、「動きたい・やってみたい」と思わせる“心理的安全基地”になります。

【歯科衛生士の現場エピソード】園・クリニックでの“口育”との差

実際に保育園・幼稚園で定期健診をすると、
よく動き、ハイハイも十分経験した子ほど「噛む力・唇の閉じ方・食事中態度」が明らかに安定。
おしゃべりや飲み込みも滑らか、食べこぼしが極端に少ないです。

逆に運動経験が乏しい(テレビ・スマホに頼りがち/ベビーカーが主)タイプは
「固形食を嫌がる」「口が開いている」などの相談が本当に多いです。

“歩くのが早い=発達優秀”ではなく、「身体を動かす質と経験」がその後の発達を分ける、現場の空気もシェアします。

【Q&A】よくある疑問と細やかなアドバイス

Q1) ハイハイ嫌いでも、噛む力は育ちますか?
A. 必ずしも長くハイハイしなくても、ゴロゴロ遊び・手押し車・うつ伏せ寝返り体操など日常の全身運動で代替可能。親が楽しそうに誘ったり、無理せず興味を引き出しましょう。

Q2) 歩き出しが遅いのは大丈夫?
A. 問題ありません。長いハイハイ期は体・口両方にメリット大。焦らず「自分から動くきっかけ作り」が大切。

Q3) 早く歩くと逆に損?
A. 損ではありませんが、ハイハイ不足で体幹や口・顎の力が育たない例も多い。歩行後も家で寝転んだり四つん這い体操をミックスしましょう。

Q4) 早産・発達ゆっくりでも“口育”できる?
A. 個性や成長パターンを尊重して、医師・保育士・衛生士と相談しながら段階的運動経験を積んで問題ありません。

【応用編】家庭で楽しむ「口育あそび」5選

・ぬいぐるみ手遊び(前後・左右・真上に誘導)
・“トンネルくぐり”レース(大きな箱やクッションを並べ、手足で進む)
・“おはよう体操”(寝返り・四つん這い・マット転がりセット運動)
・親子で顔を合わせてのベロベロだんご遊び(舌や口を大きく動かし笑いあう)
・食事前に“お口を閉じる”チャレンジタイム(鼻呼吸の練習)

まとめ:ハイハイは“噛む・飲む・話す”の礎

3人育児と歯科現場の両面から「ハイハイ=“噛む力”“口の安定”の土台」だと強く感じています。
ただ動かすだけでなく、「親子で遊びながら/環境を用意しながら」成長段階を見守ることが最良のサポート。
歩き出しの早さや型にはめず、「たくさん動いて笑って、楽しい体験ができる」育児が将来の健康・歯並び・食事生活にも大きなプラスになると信じています。

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