最新研究を通して学ぶ「噛む力」の大切さ――3児の歯科衛生士ママが伝える成長を支える口育

赤ちゃん歯科・事故予防・最新知識

毎日の食事や遊びを通して「お口周りの筋肉」を育てることで、お子さんの集中力が増したり、体調が安定したりすることをご存知でしょうか?

「子どもの口腔発達」と聞くと、多くの方が「虫歯がないか」「歯並びがきれいか」という点に注目されます。もちろんそれも大切ですが、近年の研究や医療現場では、お口の発達が全身の健やかな成長や、将来の豊かな生活を支える「大切な土台」のひとつになると考えられています。

私はこれまで歯科衛生士として30年以上の現場経験を積み、数えきれないほどのお子さんとご家族の歩みに寄り添ってきました。それと同時に、私自身も3人の子どもを育てる母親として、わが子の「噛む力」や「お口の癖」に悩み、試行錯誤してきた一人でもあります。

この記事では、2025年の日本小児口腔発達学会で学んだ最新の知見と、歯科医院の現場で日々伺うお母様方のリアルな声、そしてわが家の3児(長男・次男・長女)の成長エピソードをたっぷりとご紹介します。専門家としての視点と、母としての実感を込めて、「食べる力」がお子様の発育にどう関わるのかを、どこよりもわかりやすく解説していきます。

2025年に行われた日本小児口腔発達学会に参加した歯科衛生士の著書。常に最新の研究データを学び続けています。

[写真は2025年に実施された「日本小児口腔発達学会」に参加した著者です。常に新しい研究を学び続けています。]

口腔機能発達不全症とは?現代の子どもに増えている理由

口腔機能発達不全症の定義

「口腔機能発達不全症」とは厚生労働省が2018年に保険診療として認可した、18歳未満の子どもの「食べる」「話す」「呼吸する」といった口の機能が十分に発達していない状態です。  

わが家のエピソード:長男の場合

実は、わが家の長男もその傾向がありました。離乳食中期(8ヶ月頃)、スプーンを舌で押し返したり、飲み込みに時間がかかったりする姿を見て、私は歯科衛生士でありながらも不安を感じていました。
健診で指摘を受けたことをきっかけに、家での「遊び」を通じたトレーニングや食事環境の改善を始めました。その結果、今では何でもしっかり噛んで食べ、好き嫌いもない健康な社会人に成長しています。

なぜ今、増えているのか?

背景には、以下のような生活習慣の変化があると考えられています。

    • 食生活の変化: 柔らかく加工された食材が増え、噛む回数が激減。

    • スマホやゲーム: 視聴時の「猫背」はあごの位置を不安定にし、正しい呼吸を妨げます。

    • 外遊びの減少: 呼吸を支える体幹の筋肉が未発達になり、「口呼吸」に繋がりやすくなります。

見逃さないで!お口のサイン

以下の項目に当てはまる場合、お口の機能が未発達かもしれません。

  • 食べるのが極端に遅い、または丸飲み(早食い)

  • 柔らかいものばかり好む

  • いつも口が「ぽかん」と開いている

  • いびきをかく、または寝相が悪い

  • 滑舌が悪く、発音が聞き取りにくい

幼児の舌の動きや発音を心配そうに見守る母のイラスト

口腔発達と全身の健康がつながる理由

よく噛むことが、体と脳の成長をサポートするヒントに

噛む動作は、脳の血流を促し、神経系の発達をサポートすると言われています。 わが家では、食材をあえて「前歯でかじり取れるサイズ」にして出していました。自分で噛み切る楽しさを知ることで、子どもたちの食事への意欲や集中力は自然と増していきました。

※注意点: 練習中は喉に詰まらせないよう、必ず保護者の方が近くで見守ってあげてください。

姿勢・全身運動との深い関係

次男が1歳半の頃、食事中にすぐ椅子から立ち上がってしまう悩みがありました。観察すると、彼は「体幹」が弱く、正しい姿勢を保つのが筋肉的に辛そうでした。 舌の筋肉は全身の筋肉の一部です。公園での平均台遊びやバランスボールを取り入れたところ、食事中の姿勢が安定し、噛む力も向上しました。「全身を動かす遊び」は、立派な※2口育(こういく)トレーニングなのです。

※2「口育(こういく)」とは、日本口育協会が提唱する、0歳からの乳幼児期からお口周りの筋肉や機能を正しく発達させ、呼吸・嚥下・咀嚼・発音といった口腔機能を健全に育てる健康管理術です。哺乳、離乳食、指しゃぶりなどの口腔周囲筋のケアを通じて、正しい歯並びや健康な全身発育を生涯にわたって維持することを目指す考え方です。

最新研究でわかった!食習慣と味覚の成熟

2025年の学会でも注目されたのは、「幼児期の食体験が将来の味覚や食行動を決定づける」という点です。

「苦味」や「酸味」を拒否するのは本能的な防衛反応ですが、楽しい食卓の中で少しずつ経験を重ねることで、味覚は豊かに育っていきます。子どもの頃に食べられなかった山菜の苦みや酢の物でも、大人になると美味しく感じられるようになることがあります。そんな経験をされた方も、きっと多いのではないでしょうか。

長男の幼少期、お酢を控えめにして工夫しましたが、やはり酢の物は苦手なようでした。ところが小学生になると、給食で友達と食べた酢の物が「すごく美味しかった!」と笑顔で報告してくれたのです。

それは好き嫌いを克服したというより、味覚という感覚が成熟し味を感じる幅が広がってきたということです。食事は楽しんで食べると、味覚は育つのだと、改めて実感しました。

著者の子どもが小学生のころ、手作りおやつを子ども達で作っている写真。自分で作って食べることは食への興味を誘います。

家庭ですぐに実践できる「お口のトレーニング」3選

お口の機能を守るために、家庭で楽しく取り組める工夫をご紹介します。

※ここでご紹介する内容はあくまでわが家の体験談であり、効果には個人差があります。

食事の時の姿勢作り:足裏をしっかり地面につける

椅子に座ったとき、足がぶらぶらしていませんか?足の裏がしっかりつくように踏み台を置くだけで、噛む力が安定しやすくなります。

我が家では、食事の際に子どもの足が床につくように踏み台を用意しています。長女は最初、すぐに立ち上がって遊びたがるタイプでしたが、踏み台を使うことで姿勢が安定し、食事に集中できるようになりました。

お口を使った遊びを取り入れ筋力アップ

風船を膨らませたり、シャボン玉やストローを使ったりする動作は、遊びながらお口周りの筋肉を動かす良いきっかけになります。

わが家では渋滞中の車内で、家族そろって「風船ガム作り」を楽しんだことがあります。子どもたちは最初、うまく膨らませられずイライラしていましたが、大人が口の動かし方や力加減のコツを教えながら、何度も一緒に練習を重ねました。

すると、少しずつ小さな風船ができるようになり、やがて大きく膨らむように!3人とも成功したときの弾けるような笑顔は、今でも忘れられません。退屈な渋滞が、お口を動かしながら笑い合う、大切な家族時間になったのをよく覚えています。

家族で早口言葉大会で舌の可動域を広げる

「なまむぎ・なまごめ・なまたまご」などの早口言葉は、遊びながら舌を動かす機会になり、滑舌やスムーズな飲み込みを支える良い準備運動になります。

わが家では休日によく『早口言葉大会』を開催していました。「家族みんなで本気でやる!」のがルール。楽しみながら取り組むうちに、最初は苦戦していた子どもたちも、少しずつ舌や口の動きがスムーズになり、以前より発音がはっきりしてきたように感じました。

まとめ・応援メッセージ

30年のキャリアと3人の子育てを通じて、お口の健康は一生の宝物になると確信しています。
食べる力、呼吸する力、そして話す力は、どれもお子さんが自分らしく健やかに生きていくための大切な土台になります。もし「うちの子は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたときは、まずは身近な歯科医院を「相談できる場所」として訪ねてみてください。
歯科衛生士として、そして一人の母親として、あなたとお子さんの健やかな成長を心から応援しております。


参考文献・サイト

小児歯科学会:小児の口呼吸に関する実態について

厚生労働省:口腔機能発達不全症

日本小児口腔発達学会

 

 

お口の育ちを助ける情報提供を意図しています。ただし、個別の状況に応じた診断や治療については、必ず歯科医院の判断に従ってください。

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