はじめに
毎日の食事や遊び、お口周りの筋肉が育つことで、集中しやすくなったり、体調が安定したりすることって聞いたことありますか?
「子どもの口腔発達」と聞くと、虫歯予防や歯並びのことだけを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、近年の研究や医療現場では、お口の発達が全身の健康や将来の生活の質にまで大きく影響することが明らかになっています。
この記事では、2025年の日本小児口腔発達学会で学んだ最新の知見や、歯科医院に来院する現場での声、わが家のリアルなエピソードをたっぷりとご紹介しながら、「食べる力」がお子様の発育にどうかかわるかを、わかりやすく解説します。

写真は2025年に実施された「日本小児口腔発達学会」に参加した著者。常に新しい研究を学び続けています。
口腔機能発達不全症とは?現代の子どもに増えている理由
口腔機能発達不全症の定義と現状
お子さんがご飯を「舌でスプーンを押し返したり、飲み込みが遅い」と感じたことはありませんか?
わが家では、長男が離乳食中期(8ヶ月頃)で「ご飯を口にしても、ぺっと出たり、飲み込みに時間がかかったり」する姿に、心配になりました。
クリニックの健診で「口腔機能発達不全症の傾向が見られますね」と指摘され、家でできる遊びや、お手入れなど紹介してもらいました。
口腔機能発達不全症」とは厚生労働省が2018年に保険診療として認可した、18歳未満の子どもの「食べる」「話す」「呼吸する」といった口の機能が十分に発達していない状態です。
長男は、家族でトレーニングを始めたことで、今ではしっかり噛んで食べられるようになり、好き嫌いなく元気に過ごせるようになりました。
保育園や小学校の健診で指摘されるケースが注目されるようになり、私のクリニックでも相談が2倍近く増えました。
噛めない、口呼吸、歯並びの悪さなどの症状があり、早期発見・訓練が重要で、歯科での治療対象となります。
なぜ今増えているの?
今の子どもに増える理由は、柔らかい食材中心の食事、スマホを見ながらの生活、屋内遊びの増加であごの成長のタイミングが少なくなっことや生活習慣の変化など、様々な要素が口腔機能の発達を妨げていると考えられます。
発達不全症?ってどんなサインがある?
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食べるのが遅い、または早食い
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やわらかいものばかり好む
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よく噛まずに丸飲みする
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口がぽかんと開いている
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いびきをかく
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滑舌が悪い
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片側だけで噛む
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口呼吸が多い
離乳食の時期に「食べ物をなかなか飲み込まない」「やわらかいものばかり欲しがる」などのサインが見られ、単なる個性かと感じる親御さんも多いと思います。
歯科健診で「口腔機能発達不全症の傾向がある」と指摘され、生活習慣の見直しやトレーニングを始めるきっかけになりましたと来院するお子さんも増えました。


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口腔発達と全身の健康がつながる理由
よく噛むことが脳と体を育てる
長男の離乳食で「かじり期」に、ゆでにんじんをスティックで出したら、最初は嫌がっていた様子でしたが、何度か繰り返すうちに自分で噛む楽しさに気づきました。
それ以来、食事中の集中力がアップして、おいしそうにたべている様子を見て根気よく続けてよかったと感じたできごとです。
よく噛むと、唾液が増えて消化がスムーズになり、脳の血流もよくなります。 噛む回数が多い子は学習面でも優位なことが明らかになっています。
わが家流は、食材を「潰れにくいサイズ」に調整しました。子ども達の噛む回数が自然に増えていくのがよくわかりました。
よく噛んで食べることで、口の筋肉や顎の発達だけでなく、脳神経の活性化や唾液分泌の増加、肥満防止、虫歯や歯肉炎の予防にもつながります。
三人の子どもたちの離乳食期を振り返ると、「よく噛む」ことを意識して食材を工夫しました。
子どもの食事は飲み込みが上手にできない時もあります。必ず食事中は目を離さずに見守りましょう。

こちらの記事も参考に:よく噛める献立作りについて
姿勢や全身運動と口腔発達の関係
次男は1歳半頃、椅子に座るのがお気に入りじゃなくて、すぐ立って遊び出す子でした。 体幹がふにゃっとしていて、飲み込みも雑気味でした。
そこで、公園の平均台歩きや家でのバランスボールなど体幹を意識した遊びを増やしたら、食事中の姿勢が安定してきたのを実感しました。
最新の研究では、姿勢の良さが舌の位置を整え、顎の成長を助ける力があります。
口呼吸をせずに、鼻呼吸で免疫もアップも期待できます。
体幹トレーニングや遊びを取り入れ、座位が安定してくると、噛む力や飲み込む力も目に見えて成長しました。これは舌の筋肉は全身運動で養われるからです。

こちらの記事も参考に:外遊びと顎の成長の関係
口腔機能の遅れが将来に与える影響
長女が幼稚園の時、口呼吸が目立つ時期がありました。
先生の話しも集中して聞いていないように感じることもあり、幼稚園の先生の勧めで耳鼻科に受診して、アレルギーの薬をしばらく服用したところ、鼻炎がよくなり鼻で呼吸ができるようになりました。
するとよく眠れるようになり、日中も生き生きと活発に活動できている様子がうかがえました。
呼吸の仕方でこんなに違うのだと強く思ったできごとでした。
早めに気づいて対応したことで、口呼吸が常態化することなく済んだので、子どもの日常を観察する大切さを学びました。
口腔機能発達不全症を放置すると、歯並びや噛み合わせの問題、顔のゆがみ、呼吸障害、学習や運動パフォーマンスの低下、さらには成人後の健康リスクまで高まることがわかっています。

こちらの記事も参考に:口呼吸が全身の発育に影響するの?
最新研究でわかった!子どもの食習慣と口腔発達の相互作用
幼児期の食習慣が学齢期に影響
幼児期の食習慣が、学齢期の噛む・飲み込むといった口腔機能に大きな影響を与えるといわれています。
離乳食の時期に「よく噛む」「いろいろな食感を経験する」「自分で食べる練習をする」などの経験が、脳への刺激や発達を促し将来の口腔機能の発達に直結します。
ヒトは、本来苦みは「毒」、酸っぱさは「腐敗」という防衛機能をもっています。
それを色々な味覚を味わい、味覚により脳への刺激され、脳での味覚の感覚が統合され、成熟し味覚が育っていきます。
子供の頃食べられなかった山菜の苦みや酢の物なども大人になると美味しく感じるという経験をした方もいると思います。
長男が幼少期、おとなの味付けよりお酢を減らした味付けでしたが、酢の物が苦手でした。
しかし、小学生になりお友達と給食で食べた酢の物がおいしかった!と喜んで帰ってきました。
それは好き嫌いを克服したのではなく味覚という感覚が成熟し味を感じる幅が広がってきたということです。
食事は楽しんで食べると、味覚は育つのだと、改めて実感しました。
相談例:食習慣改革
長男の離乳食期は、つい食べやすいペースト状のものばかり与えがちでした。
その結果、1歳ごろまで「丸飲み」や「食べこぼし」が多く、歯科健診でも指摘されました。
完了期以降から少しずつ固さや大きさを変え、手づかみ食べやスプーン練習やお口のマッサージなどを積極的に取り入れたところ、噛む力や食べる意欲がぐんと伸びました。
いつでも練習すれば食べれるようになります。

生活習慣・遊び・姿勢の大切さ
スマホやゲーム機の普及で、口を使った遊びや会話が減り、姿勢が悪くなっている子どもが増えています。
全身を使った遊びや正しい姿勢を意識することが、口腔機能の発達にも直結します。
相談例:家族で取り組む「お口遊び」
我が家では、毎晩の歯みがきタイムを家族のイベントにしています。
子ども達は『誰が一番きれいに磨けるか』と張り切って歯ブラシを持ち、パパは『奥歯までしっかり磨けたよ!』と声をかけます。
休日には『早口言葉大会』や『風船ふくらまし大会』も開催し、子ども達は最初は苦戦していましたが、繰り返すうちに舌や口の動きが滑らかになり、発音もはっきりしてきました。
口腔発達が全身の健康に与える影響
呼吸・睡眠・集中力への影響
口呼吸やいびきは、口腔機能発達不全症のサインであり、睡眠障害や集中力低下、学習・運動パフォーマンスの低下にもつながります。
ある患者さんはいびきの悩みでご相談をうけました。
歯科でのお口のトレーニングと生活習慣の見直しで、いびきが減り、朝の目覚めも良くなりました。とお声をいただきました。
一つの原因ではありませんが、お口の筋肉不足も考えてみてください。
免疫力・感染症リスク
口腔ケアを徹底することで、口腔内の細菌を減らし、免疫力が高まり、感染症リスクも低減します。
また口を閉じ、鼻呼吸と唾液で潤った口は、風邪をひきにくいというデータもでています。
私自身、子どもたちの歯みがき習慣を徹底したことで、風邪やインフルエンザにかかる頻度が減ったと実感しています。
口腔機能発達不全症を防ぐための家庭でできる工夫
噛む力を育てる食事の工夫
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食材の固さや大きさを段階的に変える
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よく噛む必要がある食材(野菜スティック、かためのおにぎりなど)を積極的に
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手づかみ食べやスプーン練習を取り入れる
姿勢と遊びの工夫
我が家では、食事の際に子どもの足が床につくように踏み台を用意しています。
長女は最初、すぐに立ち上がって遊びたがるタイプでしたが、踏み台を使うことで姿勢が安定し、食事に集中できるようになりました。
また、公園で体を思いっきり動かしたり、家ではストローを吸いあげたり、大きな風船を膨らませたりして、口や体の動きを鍛える遊びを積極的に取り入れます。
家族みんなで口腔ケア
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毎日の歯みがきを家族で習慣化
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定期的な歯科健診・フッ素塗布
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食後に水やお茶でお口を洗い流す
体験談:家族の協力がカギ
三人の子育てを通じて感じたのは、「家族みんなで取り組むこと」の大切さです。
兄弟で歯みがきタイムを競争したり、パパも一緒に「お口遊び」に参加したりすることで、子どもたちのやる気や継続力がアップしました。
専門家としてのアドバイスと体験
歯科衛生士として働く中で、多くの親御さんから『うちの子、口がぽかんとあいている』『いびきをかく』などの相談を受けます。
私自身も三児の母として、子どもの口の動きや姿勢に気を配り、専門家のアドバイスを積極的に取り入れてきました。
例えば体幹トレーニングや口の筋肉を鍛える遊びを取り入れることで、子ども達の『食べる力』や『話す力』が大きく成長したと実感しています。
学童期への影響
長女が小学校に入ってからも、幼児期に身につけた『よく噛む』『自分で食べる』食習慣が生きていると感じています。
給食の時間にしっかり噛んで食べている様子や、友達と楽しく会話しながら食事を楽しむ姿を見て、幼い頃からの積み重ねが学童期にも大きな影響を与えていると実感しています。
また歯科健診でも『口腔機能がしっかり発達している』と評価され、親としても安心しています。
まとめ・応援メッセージ
三児の成長を見守る中で、毎日の小さな積み重ねが子ども達の『食べる力』や『話す力』を育て、心や体の健康、そして自身や自己肯定感にもつながっていると強く信じています。
専門家としても母親としても、『食べる力』は子どもたちの未来を支える大切な土台だと確信しています。
お子さんの『食べ方』『噛み方』『歯並び』『お口ぽかん』など、気になることがあれば、ぜひ早めに歯科医院や専門家に相談してみてください。
家族みんなで楽しく取り組むことで子ども達の健やかな成長を応援します!
参考文献
小児歯科学会:小児の口呼吸に関する実態について
厚生労働省:幼児期における歯科保健指導
日本小児口腔発達学会

本記事は、歯科衛生士としての経験に基づく情報提供を目的としています。個別の診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ずかかりつけの歯科医院を受診してください


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