「子どもの口腔発達」と聞くと、虫歯予防や歯並びのことだけを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年の研究や医療現場では、口腔機能の発達が全身の健康や将来の生活の質にまで大きく影響することが明らかになっています。
私は歯科衛生士・口育士として多くの親子と関わり、三児の母としても子どもの成長を見守ってきました。この記事では、最新の研究や現場での実感、さらに私自身や親子の体験談を交えながら、子どもの「食べる力」と全身の健康の密接な関係について、わかりやすく解説します。
口腔機能発達不全症とは?現代の子どもに増えている理由
口腔機能発達不全症の定義と現状
「口腔機能発達不全症」とは、食べる・話す・呼吸するなどの口の機能が十分に発達していない状態を指します。明らかな疾患がないのに、噛む・飲み込む・発音・呼吸などがうまくできない子どもが増えており、2018年からは保険診療の対象となりました。
どんなサインがある?
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食べるのが遅い、または早食い
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やわらかいものばかり好む
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よく噛まずに丸飲みする
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口がぽかんと開いている
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いびきをかく
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滑舌が悪い
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片側だけで噛む
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口呼吸が多い
私の三男も、離乳食の時期に「食べ物をなかなか飲み込まない」「やわらかいものばかり欲しがる」などのサインが見られ、当初は単なる個性かと思っていました。しかし、歯科健診で「口腔機能発達不全症の傾向がある」と指摘され、生活習慣の見直しやトレーニングを始めるきっかけになりました。
口腔発達と全身の健康がつながる理由
よく噛むことが脳と体を育てる
よく噛んで食べることで、口の筋肉や顎の発達だけでなく、脳神経の活性化や唾液分泌の増加、肥満防止、虫歯や歯肉炎の予防にもつながります。
三人の子どもたちの離乳食期を振り返ると、「よく噛む」ことを意識して食材を工夫した子は、集中力や食事のリズムも良く、体調を崩しにくいと感じました。
姿勢や全身運動と口腔発達の関係
口腔機能は全身の運動機能と深く結びついています。
例えば、正しい姿勢で座れない子は、舌や顎の動きが不十分になりやすく、丸飲みや食べこぼしが増えます。
三男は椅子に座るのが苦手で、食事中にすぐ立ち上がってしまうタイプでした。体幹トレーニングや遊びを取り入れ、座位が安定してくると、噛む力や飲み込む力も目に見えて成長しました。
口腔機能の遅れが将来に与える影響
口腔機能発達不全症を放置すると、歯並びや噛み合わせの問題、顔のゆがみ、呼吸障害、学習や運動パフォーマンスの低下、さらには成人後の健康リスクまで高まることがわかっています。
実際、私が支援した小学生のケースでも、口呼吸や噛み合わせの問題が集中力や運動能力の低下、睡眠障害につながっている例がありました。
最新研究でわかった!子どもの食習慣と口腔発達の相互作用
幼児期の食習慣が学齢期に影響
幼児期の食習慣が、学齢期の噛む・飲み込むといった口腔機能に大きな影響を与えることが、最新の研究で明らかになっています。
離乳食の時期に「よく噛む」「いろいろな食感を経験する」「自分で食べる練習をする」などの経験が、将来の口腔機能の発達に直結します。
体験談:我が家の食習慣改革
長男の離乳食期は、つい食べやすいペースト状のものばかり与えていました。その結果、2歳ごろまで「丸飲み」や「食べこぼし」が多く、歯科健診でも指摘されました。
次男・三男のときは、初期から少しずつ固さや大きさを変え、手づかみ食べやスプーン練習も積極的に取り入れたところ、噛む力や食べる意欲がぐんと伸びました。
生活習慣・遊び・姿勢の大切さ
スマホやゲーム機の普及で、口を使った遊びや会話が減り、姿勢が悪くなっている子どもが増えています。
全身を使った遊びや正しい姿勢を意識することが、口腔機能の発達にも直結します。
体験談:家族で取り組む「お口遊び」
我が家では、風船ふくらましやストロー遊び、歌や早口言葉など「口をたくさん動かす遊び」を家族で楽しむようにしました。
これにより、三男の「お口ぽかん」が改善し、発音もはっきりしてきたと実感しています。
口腔発達が全身の健康に与える影響
呼吸・睡眠・集中力への影響
口呼吸やいびきは、口腔機能発達不全症のサインであり、睡眠障害や集中力低下、学習・運動パフォーマンスの低下にもつながります。
三男は、夜中によくいびきをかいていましたが、歯科での指導と生活習慣の見直しで、いびきが減り、朝の目覚めも良くなりました。
免疫力・感染症リスク
口腔ケアを徹底することで、口腔内の細菌を減らし、免疫力が高まり、感染症リスクも低減します。
私自身、子どもたちの歯みがき習慣を徹底したことで、風邪やインフルエンザにかかる頻度が減ったと実感しています。
歯並び・顎・顔面の成長
正しい噛み方や舌の動きは、顎や顔面のバランスの良い成長に不可欠です。
三兄弟とも、離乳食期から「舌を上にあげる」「左右バランスよく噛む」ことを意識したところ、歯並びや顎の発達も順調です。
口腔機能発達不全症を防ぐための家庭でできる工夫
噛む力を育てる食事の工夫
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食材の固さや大きさを段階的に変える
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よく噛む必要がある食材(野菜スティック、かためのおにぎりなど)を積極的に
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手づかみ食べやスプーン練習を取り入れる
姿勢と遊びの工夫
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食事時は足がしっかり床につく椅子を使う
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全身を使った遊びや運動を毎日取り入れる
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口をたくさん動かす遊び(風船、ストロー、歌、早口言葉など)
家族みんなで口腔ケア
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毎日の歯みがきを家族で習慣化
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定期的な歯科健診・フッ素塗布
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食後に水やお茶でお口を洗い流す
体験談:家族の協力がカギ
三人の子育てを通じて感じたのは、「家族みんなで取り組むこと」の大切さです。
兄弟で歯みがきタイムを競争したり、パパも一緒に「お口遊び」に参加したりすることで、子どもたちのやる気や継続力がアップしました。
まとめ~「食べる力」は一生の健康の土台
最新研究や現場の実感からも、子どもの口腔発達は全身の健康や将来の生活の質に直結していることがわかります。
「よく噛む」「正しい姿勢」「家族で楽しくケアする」――こうした毎日の積み重ねが、子どもたちの健やかな成長と未来を支えます。
私自身、三児の母としてたくさんの失敗や悩みを経験しましたが、専門家として
学び続けることで、子どもたちの成長をより深く見守れるようになりました。毎日の食事や遊び、家族のコミュニケーションの中で「お口の健康」を意識することが、子どもたちの未来の土台となります。
お子さんの「食べ方」「噛み方」「歯並び」「お口ぽかん」など、気になることがあれば、ぜひ早めに歯科医院や専門家に相談してみてください。専門家のアドバイスを受けることで、家庭でのケアや生活習慣の工夫がより効果的になります。
家庭でできることはたくさんあります。
例えば、食事の際に「よく噛むね」「お口を閉じてみよう」と声をかけたり、家族みんなで歯みがきタイムを楽しんだり、体をたくさん動かす遊びを取り入れたりするだけでも、子どもの口腔発達は大きく変わります。
私自身も、三人の子どもたちの成長を通じて「食べる力」が心や体の健康、そして自信や自己肯定感にもつながることを実感しています。
毎日の小さな積み重ねが、やがて大きな成長や笑顔につながります。
これからも、家族みんなで「食べる力」を育て、笑顔あふれる毎日を過ごしていきましょう。お子さんの健やかな成長と、ご家族の幸せを心から応援しています。
何か不安や疑問があれば、遠慮なく専門家に相談してください。
子どもの「食べる力」と「お口の健康」は、今この時期から始めることができます。一緒に、未来につながる健康づくりを楽しみましょう。
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