はじめに
育児中の毎日は、息つく暇もないほど忙しいですよね。そんな時、便利な子育てグッズに救われる瞬間は多いはずです。
私自身、3人の子どもを育ててきた母親であり、歯科衛生士として多くのお子さんの食事場面を見守ってきました。
私自身もゆっくりトイレに行けないことも、何回もありました。子育ては待ったなしです。
便利な子育てグッズは、日々の生活を支えてくれる大切なアイテムです。
ただ、お口や体の健やかな発達(※口育)という視点から見ると、「いつ、どう使うか」で、お子さんの成長へ影響はしてきます。
今回は、30年以上の歯科衛生士としての経験と、我が家の3児の体験談を交えながら、身近なアイテムを使いながらとお口の成長を両立させるための「賢い付き合い方」をお伝えします。
育児グッズを活用中のママ・パパこそ、ぜひお読みください。
※「口育(こういく)」とは、日本口育協会が提唱する、0歳からの乳幼児期からお口周りの筋肉や機能を正しく発達させ、呼吸・嚥下・咀嚼・発音といった口腔機能を健全に育てる健康管理術です。哺乳、離乳食、指しゃぶりなどの口腔周囲筋のケアを通じて、正しい歯並びや健康な全身発育を生涯にわたって維持することを目指します。

「座る椅子」と背骨のカーブ、あごの深い関係
赤ちゃんの体の成長は、首が座わる、寝返りができる、うつ伏せができる、ハイハイができ、腰が座り、つかまり立ち、歩く、走るという段階で進みます。
どれも飛ばすことはできません。
体幹が育ち、少しずつお座りの準備が進み腰が座りはじめてくる頃、すっぽりと体を固定してくれるソフトなベビーチェアはとても重宝します。
視界が変わって喜ぶ赤ちゃんの姿に、つい長時間座らせてしまいがちですが、少し注意が必要です。
わが家の体験談
わが家の長男も、腰がすわりきる前の時期に、フィット感の良い椅子に座らせていたことがありました。
料理で火を使うときやトイレに行くときに、長男を座らせると、長男も泣かずに機嫌よく座ってくれていました。
当時は「倒れなくて安心」と思っていましたが、よく見ると赤ちゃんの背中が丸まり、あごが胸に近づくような姿勢になっていたんです。
歯科衛生士として今振り返ると、この姿勢ではあごが自由に動かず、正しい飲み込みの成長を妨げてしまう可能性があったことに気づきました。
口育ポイント
赤ちゃんの背骨や腰がしっかり発達する前に、長時間無理に固定された姿勢で過ごすと、体への負担だけでなく、お口周りの筋肉もうまく使いこなせません。
「家事の間だけ、5分〜10分だけ助けてもらう」といったように、時間を決めて活用するのがコツです。
それ以外の時間は、平らな場所でゴロゴロと自由に体を動かすことが、将来の健やかなお口育てへの第一歩になります。
「コップ」選びで育む唇のチカラ
外出先でこぼれないストローマグは欠かせないアイテムです。車や、公園など飲み物がこぼれないのは、ママの強い味方です。
ある保育園では、ストローマグを持ち物の必須アイテムとしている園もあると親御さんから相談を受けることもあります。
でも、お家ではストローで「吸う」動きだけでなく、唇を閉じてコップのふちをしっかり挟んで水分を「取り込む」「すする」という練習も大切にしたいですね。
わが家の体験談
末っ子の長女は、ストローばかり使っていた頃、子どもが唇を突き出すような癖がついているのに気づきました。
そこで、浅くて小さなコップで練習を始めたところ、上唇を器の縁に添えて水を吸い込む、本来の飲み方を覚え始めました。
最初はこぼして当たり前。そんなゆとりが、お口を閉じる力を育ててくれました。
コップ飲みも自然とできるようになるのではなく、練習してできるようになるのだと気づきました。
番外編:コップ飲みをマスターするステップ
お口の筋肉をしっかり育てる コップ飲みの練習は、焦らず段階を踏むのがコツです。
まずは浅いスプーンを唇に軽く当て、上唇で水分を「取り込む」感覚から始めましょう。
次に、おちょこのような小さなカップやペットボトルの蓋を利用します。
この段階で唇の端から水分がこぼれなければ、次のステップへ進む目安です。
慣れてきたら、いよいよコップデビューです。
最初は両手の持ち手つきカップでごく少量の水を無理なく飲めるかを確認しながら、徐々に量を増やしていきます。
カップの傾け方やスピードなど成功には様々な要素が必要です。
最終的には片手持ちのカップに移行しますが、ポイントは「自分で一口の量をコントロールできること」です。
ぜひお子さんとコップ飲み練習をはじめてみてください。

「揺れるアイテム」と体幹の育ち
自動や手動で優しく揺れるベビーラックやチェアは、家事の合間に赤ちゃんが心地よく過ごせる貴重な場所ですよね。
このアイテムも、お口の育ちに関わる「姿勢」を少し意識してみましょう。
わが家の体験談
忙しい時間、つい揺れ機能のあるシートに頼り切りになっていた時期がありました。
程よく揺れるのが心地よいのか、そのまま寝てしまうこともありました。
でも、長時間同じ角度で体が固定されると、どうしても姿勢が一定になり、呼吸が浅くなりがちです。
「ご機嫌な時や手の空いてる時は平らな少し硬めの床で自由に遊ぶ」というメリハリを意識するように変えました。
口育ポイント
体が沈み込むような姿勢が長く続くと、首やあごの位置が安定しにくくなることがあります。
赤ちゃんは寝たまま足をあげて顔に近づけたり、寝転がって床を蹴って上に進んだりすることが、体幹を育てたり、腹筋や背筋などの体全体の筋力を自然と発達させていきます。
またお口を閉じる筋肉や、しっかりとした呼吸機能を育むためには、手足を自由に動かせる「寝返り」や「ズリバイ」の経験が欠かせません。
便利グッズでママの時間を確保しつつ、赤ちゃんの「自由な動き」も同じくらい大切にしてあげたいですね。
「エプロン」が教えてくれる一口の量
ポケット付きのエプロンは、後片付けを楽にしてくれる魔法の道具です。
洋服やテーブル、時には床まで食べたものが落ちてしまうことは日常茶飯事です。
でも、「汚さないこと」を優先しすぎない勇気も必要かもしれません。
わが家の体験談
後片付けを楽にしてくれる便利なエプロン。わが家でも愛用していましたが、汚れを気にしなくて済む安心感から、つい私が次々とスプーンを口に運びすぎていた時期がありました。
しかし、ある時思い切って、子どもが自由に手で掴んで食べるのをじっと見守ってみたんです。
すると、自分で一口の量を覚えようと試行錯誤する中で、子どもの表情がパッと明るく、豊かになったことに驚きました。
顔や周りが汚れるのは、一生懸命にお口の機能を育てている「成長の証」です。
この「手づかみ食べ」の経験こそが、将来のきれいな歯並びや正しい噛み合わせの土台となる「お口の鋭い感覚」を養ってくれるのだと実感しました。
口育ポイント
大きめのエプロンだと、腕とテーブル・食材の距離感がつかみにくく、手づかみ食べの練習がスムーズに進まないことがあります。
また、首にかかる大きなシリコン製エプロンは赤ちゃんにとって意外な負担で、首の筋力がまだ弱い時期には支えられず、頭が傾いて飲み込みのリズムが乱れることもあります。

こちらの記事も参考に:口の成長から進める離乳食
最後に:心地よいバランスを見つけましょう
育児グッズは、お母さんの笑顔と心の余裕を守るための大切な存在です。
それらを遠ざけるのではなく、「本来の発達のタイミングを少しだけ意識して添える」という感覚で使ってみませんか?
「よし、今日は広々とした床で一緒にゴロゴロしてみようかな」「腰の準備が整うまで、椅子に座るのは少しの間だけにしよう」
そんな日々の何気ない選択のひとつひとつが、お子さんの健やかな体とお口の土台を作る、かけがえのないプレゼントになります。
完璧を目指さなくても大丈夫。ママの「ちょっと意識してみよう」という優しい気持ちが、お子さんの未来を支える大きな力に繋がっていきます。

家庭での発育サポートの一例であり、特定の疾患を治療するものではありません。本記事は情報提供を目的としており、個別の診断や治療にはかかりつけ医への相談をおすすめします。

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