はじめに
「うちの子、まだあまり話さないけど大丈夫かな?」——そんな不安を感じるママは少なくありません。実は「話す力」は、お口の動きや生活習慣とも深く関わっていると言われています。
私自身の長男も、言葉がゆっくりなタイプでした。保育園で同じ月齢の子が「ママ!」と話すのを聞き、「うちの子の成長は遅いのかな」と戸惑ったこともあります。当時は先生の「個人差があるから大丈夫」という言葉に、どれほど救われたか分かりません。
その後、歯科衛生士・※口育士として多くのお子さんと関わる中で、「言葉がゆっくりな子には、お口の動かし方に特徴が見られることが多い」という事実に気づきました。 この記事では、私自身の育児経験と専門知識を交え、おうちで楽しくできる「ことばを育むケア」のヒントをお届けします。
※「口育(こういく)」とは、日本口育協会が提唱する、0歳からの乳幼児期からお口周りの筋肉や機能を正しく発達させ、呼吸・嚥下・咀嚼・発音といった口腔機能を健全に育てる健康管理術です。哺乳、離乳食、指しゃぶりなどの口腔周囲筋のケアを通じて、正しい歯並びや健康な全身発育を生涯にわたって維持することを目指す考え方です。


口育(こういく):お口って育てるものなの?
「話す力」とお口の筋肉の意外な関係
発語には、耳で聴いて理解する力や知的な発達だけでなく、実は「お口や舌の筋肉(運動機能)」が非常に大きな役割を担っていると考えられています。
言葉を発するということは、脳からの指令を受けて、唇や舌、頬の筋肉をミリ単位で瞬時に、かつ複雑に動かす高度な「運動」でもあるからです。
長男の時、心配で耳鼻科を受診したところ、「機能に問題はないけれど、話すのには口の動きや脳の発達も関係している」と教わりました。当時の私は、「言葉=耳の問題」と思い込んでいたので、初めての育児で、耳で聞くだけでなく、お口を動かす力も大切なんだという視点の大切さを学び、非常に驚いたのを覚えています。
歯科衛生士の解説:言葉を作る「お口の筋力」とは?
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唇の閉鎖力: 「パ行」「バ行」「マ行」など、唇をしっかり閉じてから弾く音に役立てられます。
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舌の挙上力(持ち上げる力): 「タ行」「ナ行」「ラ行」などは、舌先を上あごの正しい位置に押し当てる力のサポートになります。
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頬の緊張感: お口の中に適度な圧力を保ち、音を明瞭に響かせるために大切です。
これらの筋肉が未発達だと、音が漏れてしまったり、舌がうまく回らなかったりして、言葉は出ているけれど、何を言っているか聞き取りにくさにつながることもあります。だからこそ、日々の生活の中でこれらの筋肉を「楽しく使う」経験が、滑らかな発語への近道となるのです。
【発語を支える3つの柱】
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理解する力: 周りの言葉を聴き、意味を理解する。
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伝えたい意欲: 家族との楽しいコミュニケーション。
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動かす力(口育): 唇・舌・呼吸をコントロールする筋力。
家庭でできる口の筋肉トレーニング
食事で「話す筋肉」をトレーニング
毎日の食事は、単に栄養を摂るだけでなく、お口や舌の筋肉を鍛える大切な機会です。
噛み応えのある献立の工夫
私の家では、おやつに野菜スティックや硬めのおせんべいを取り入れました。最初は嫌がることもありましたが、「パパと一緒にカリカリしようね!」とゲーム感覚で誘うことで、自然と噛む回数が増えていきました。
実は、しっかり噛むことで「あごの骨」に刺激が伝わり、正しい歯並びの土台が作られます。それだけでなく、舌を上下左右に巧みに動かす力がつくため、一見関係なさそうな「発音の明瞭さ」にも直結するのです。
歯科衛生士のアドバイス:今日からできる3つの工夫
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食材の切り方を大きくする: いつもより少し大きめに切るだけで、自然と咀嚼(そしゃく)回数が増えるきっかけになります。
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足の裏を地面につける:姿勢が安定し、噛む力を引き出しやすくなります。
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水分で流し込まない: 自分の力で唾液を出して飲み込むことが、舌の筋力アップを助けます。
お風呂で楽しく!「うがい」遊び
うがいは、唇、頬、舌を総合的に使う高度なトレーニングです。
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ぶくぶくうがい: 唇を閉じる力と、頬の筋肉を鍛えます。
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ガラガラうがい: 舌の奥を上あごに持ち上げる動きが必要で、「カ行」の発音を助けると言われています。
【わが家のエピソード】
末の娘は上を向くのが苦手だったので、まずはお風呂で天井を見る練習から始めました。ガラガラうがいができるようになると、それまで少し舌足らずだった発音が、少しずつクリアになったと感じました。(個人の感想です)
遊びの中に「吹く・笑う」を取り入れる
筋肉を鍛えるといっても、訓練である必要はありません。「遊び」が一番の近道です。
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にらめっこ・変顔大会: 豊かな表情を作ることで、口周りの筋肉をフル活用します。
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吹くおもちゃ: シャボン玉、吹き戻し、ラッパなどは、息をコントロールする力(腹式呼吸)を育てます。

日常生活で気をつけたいポイント
大人の口の動きを見せる
子どもは大人の真似をしながら言葉を覚えていきます。発音が気になるときは、親が大げさに口を動かしながら話すことで、正しい口の動きを学ぶことができます。私も子どもと向き合って、ゆっくりはっきりと発音するように心がけています。
長男は「玉ねぎ」がうまく言えずに「たまげに」とよく言っていました。あどけなくてとてもかわいかったのですが、野菜図鑑を利用してゆっくり何回も「た・ま・ね・ぎ」と練習しているうちに、上手にたまねぎと言えるようになりました。
リアルなコミュニケーションを大切に
動画やスマホなどのデジタル機器に頼りすぎず、親子で手遊び歌や歌遊び、絵本の読み聞かせ、会話を楽しむ時間を意識的に作りましょう。
手遊び歌やにらめっこは、脳の発達やことばの力を伸ばすだけでなく、顔全体の筋肉を使うので口の発達にも役立ちます。

外遊びや体を動かす遊びも「口育」
次男の成長を振り返って強く感じるのは、「全身を動かす遊びは、言葉を支える体幹や呼吸する力を育み、巡り巡ってお口の筋肉の健やかな発達を助けることにつながります。」ということです。
次男は幼い頃から、長男やお友達の後を追いかけて、外で活発に遊び回る子でした。実は、この「全身運動」こそが、言葉の土台となる「体幹」を鍛えていたのです。
体幹がしっかりして姿勢が安定すると、頭の位置が正しいポジションに固定されます。すると、あごをスムーズに動かせるようになり、舌が自由に動くための十分なスペースがお口の中に確保されます。
次男の発音が幼い頃から非常にクリアだったのは、体全体を使った遊びを通して、無意識のうちに「正しくお口を動かすための土台」が完成していたからだと私は感じています。
口育士の視点:なぜ「ハイハイ」や「外遊び」が大切なの?
言葉を発するためには、呼吸をコントロールする力が必要です。しっかり走り回って息を切らしたり、大笑いしたりする経験は、肺活量を高め、腹式呼吸を促す助けになります。 また、ハイハイや木登りなどで腕や肩の筋肉を使うことは、実は喉周りの筋肉の安定にもつながっています。「しっかり噛んで、しっかり遊ぶ」、この両輪が揃うことで、お子さんの「話す力」はより健やかに育むことにつながります。

日本小児理学療法学会:子どもの口腔機能の発達と身体発達のつながり

まとめ
発語が遅いかなと感じたときは、焦らずに口や舌の動き、日々の生活習慣を見直してみましょう。食事や遊び、うがいの練習など、家庭でできる工夫を取り入れることで、口の筋肉が自然と鍛えられ、発語や発音の力を育む一助となります。
大切なのは、親子で楽しみながら続けることです。子どものペースに合わせて、たくさん声をかけ、たくさん笑い合いながら、ことばの力を育んでいきましょう。

この記事は実体験と最新の専門家の知見をもとに執筆しています。歯科衛生士としての経験に基づく情報提供を目的としています。個別の診断や治療に代わるものではありません。発語や発音に不安がある場合は、健診や専門機関に相談することも検討してください。


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